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心のパンツは脱げるのか?

30代のおにー・・・おっさんが心のパンツを脱いで話しかけるよ。

『中学生円山』感想(ネタバレあり)

映画

NHK朝ドラ『あまちゃん』が好評ですが、脚本家のクドカンこと、宮藤官九郎の脚本/監督の映画『中学生円山』を観ました。

いつもなら「ネタバレなしで、どんな人が観ると楽しめそうか」って視点で感想を書くのが多いのですが、
今日はネタバレありで、自分の感想をたらたらと書きたいと思います。

・・・が、その前にネタバレなしで、お話すると。
あまちゃん』を期待して観に行く人は残念な思いをすると思います。
もしくは「映画の登場人物の心情とかを自分なりに解釈するタイプの人」で『あまちゃん』のようなコミカルさのみを求める人にはお勧めできないかなぁと。

観たままのコミカルさだけしか気にしない人は楽しめるかと思います。
あまちゃん』もそうですが、主人公が自転車で全力疾走のシーンが多用されるのはクドカンの主人公ならではなので、映像だけなら面白いシーン沢山です。

「妄想」がきっかけの映画なので、僕も妄想全開で感想を書きますよ。

この映画。
中学生男子なら一度は自分のち○ちんを舐めようと思った事がある。という普遍の心理を大前提にしております。異議なし。

で主人公の円山克也君は自主トレと称して、体を柔らかくすることを日々の日課とし、いつか自分のちん○んを舐めるのが目標。
その自主トレの最中に妄想の世界に入ってしまう。
そんな円山君の住んでいる団地に怪しげなシングルファザーが越してきて・・・妄想の末、団地近辺で起こった殺人事件の犯人はそのシングルファザー(下井:草薙剛)だと決めつけて学校のクラスメートに話してしまう。
実際はそんなわけはなく、罪悪感から下井に謝罪した際に、自分の妄想辟を話したところ、下井に妄想行為を肯定され、いつしか団地に住む人々の妄想話が開始される。

ってな具合で話がすすんでいくのですが、

この映画、コミカルな面していますが、そうとう残酷な映画だと思います。

映画をコミカルな話でまとめる事もできたでしょうに「人を何故殺してはいけないのか?」「現実に起こることは妄想を凌駕する」等をテーマに盛り込んでいるため、話が相当重くなったなぁという印象でした。

映像としては面白いシーンがあるのだけれど、よくよく考えると笑ってばかりもいられないよなぁという感じ。

クドカンの笑いってムズムズする笑いなのですが、下井の正体等が明らかになる後半からはなかなかヘビーにも思えます。

ここから僕が感じたネタバレありの事。

下井の奥さんを殺した少年と円山君は表裏一体
物語の後半。下井は円山の妄想とほぼ同じ人物で息子を連れながら、社会の闇ともいえる人間を始末している(であろう)事が警察から明かされます。
そして、下井自身が元警官であり、円山君と同じ中学生に妻をレイプされて殺されている過去がきっかけになっている事も。(劇中にレイプ描写はないですが、奥さんの遺体は左足首までパンティーを下されていたので間違いないと思います)

中学生特有の性への妄想を自分のちん○んを舐めるという事で自分に向けた円山君。
対して、性への妄想を逸脱し、具体的に下井の奥さんを撲殺、レイプする事で欲求を満たした少年。

性への想いを自分に向けるか、他者へ向けて犯罪に手を染めるか。

円山君の妄想に対して、下井は話を聞きつつも「別に面白くないよ」とも言いました。
下井は円山君の妄想を肯定したというよりも、自分の妻を殺した少年の妄想が理解できるものだったのかを円山君を通して知ろうとしたのかもしれないなぁと思います。

もちろん、自分の○んちんを舐めようとする行為は男なら誰もが一度は通る道なので下井自身もそこには共感していたと思うのですが、
円山君の妄想がどうなっていくのかを知ろうとしていたのではないかなぁとも思えるのです。

妄想以上に崩壊していく日常。

円山君のお母さんは韓流ドラマの大ファン。そしてその主演男優が何故か俳優をやめて電気技師として団地にやってくる。
お母さんはそんな元韓流スターを家電修理と称して、何度も呼び肉体関係を結ぶ。

元韓流スターとお母さんのやりとりはコミカルですし、設定は現実的にはあり得ないという風に目くらましされていますが、
これは「偶然団地に電気技師として来た、元同級生」でもなんでもいいんですよ。

怖いなぁって思ったのはお母さんは旦那さんに「本当に電機屋さん読んでいいのね?」って確認をとっているところです。
これ、お父さんはDVDプレーヤーが壊れてしまったからあたりまえの事だという認識で許可だしていますけれど、
お母さんは電機屋さんを呼ぶことで浮気がはじまるであろうことは予感しているのですよね。
だからこそ、旦那さんに確認をとり、最終的には浮気はするけれど、旦那さんには話をしたという自分の中での免罪符を与えている。

これ、リアルだなと。

円山君が妄想している間に現実の世界は妄想以上の事がおきている訳です。

小5の妹は近所に住む徘徊老人と心を通わせ、交際をはじめる事になります。
これはこれでちょっとした愛の物語で面白いので、よけいにこの映画が複雑になっているなぁという感じ。

父親(仲村トオル)の存在
映画の冒頭で妄想全開で公園で裸踊りをしていた円山君。それを録画していた下井。そして下井がそれを円山家にDVDとして送ったものをみたお父さん。
「なんだこりゃ」と言いつつも、最終的にとった行動は円山君を抱きしめ「何があっても俺は味方だからな」とのセリフ。
これが円山君を支える事になるんだなぁと思いました。

どんなに妄想が膨らんで、どんなにおかしいと思われる行動をとったとしても味方でいてくれる人がいる。これって思春期の少年には大事な事だと思います。

いろいろまとまらないまま、だらだらと書いてきましたが、
草薙剛に「公園で裸踊りは禁止」と表現させたクドカンはやっぱり楽しいね。

この映画は正直感想がまとまりません。
結構いろんな要素を含んでいて、痛快妄想ムービーでは決してないと思うからです。

もちろんクライマックスの体育館にて部活中の円山君が突然ズボンを脱ぎだしちんちんを舐めようとするシーン。
いつの間にやらみんなが応援して・・・っていうのも楽しいのですが。

全てが終わった後、円山君が妄想をやめた。というのは大人になった事を表しているのかもしれませんね。

今でも妄想が終わらない僕にはわかりませんけれど。

ただ、きっと好きな女の子を妄想でどうにかするではなく、円山君は現実に想いを伝える事ができるだけの成長はしていると思わせてくれるラストシーンでした。

おじーちゃんと妹
これはこれで抜き出して考えると面白いのですが、印象に残ったセリフは
お互いの親に交際を反対され、別れ?のシーンにて、小5の妹がおじーちゃんの頬にキスをする。
おじーさん「はじめてかい?」うなずく妹。
「おじーさんは?」と問う妹に対して「俺は、最後だな」と答えるおじーさん。
なんかね。いいシーンだと思いました。


中学生円山』は心の底から笑える面白い映画か?と問われれば僕はそう思いませんでしたが、つまらなかったのか?と聞かれればそうでもなかったなぁと。
何かが残ったようで、何も残っていないような、あの頃を懐かしく思ったような不思議な気持ちにさせてくれる映画でした。

好き嫌いは分れる映画だとは思いますが、興味があれば是非。

中学生円山』★★★