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心のパンツは脱げるのか?

30代のおにー・・・おっさんが心のパンツを脱いで話しかけるよ。

(ネタバレあり)『鑑定士と顔のない依頼人』を観てきたよ。

話題作『鑑定士と顔のない依頼人』を有楽町のTOHOシネマズシャンテで観てきました。
僕はネットで席を予約していきましたが朝10時前の段階で夕方の回までは完売でした。

監督/脚本:ジョゼッペ・トルナトーレ
音楽:エンニオ・モリコーネ
この二人が並べば当然『ニュー・シネマ・パラダイス』な訳でして映画に来ていた客層は比較的年齢が高い層が多かったと思います。

今回は極上のミステリーという事で期待が高まる作品でした。
予告も期待させてくれます。

* これから観る方へ

予告編を見て興味を持たれたり、もともと観ようと思っていた方はここから先は読まずにっというよりミステリーであるので前情報をあまり入れないで観に行った方が楽しめると思います。
面白かったか?つまらなかったか?は個人の主観ではありますが、そういうった要素を頭にいれちゃうとオチにいくつくまでに予想が簡単にできたり、もしくは素直に楽しめなかったりすると思うので、何も情報をいれず観に行くのが一番いいと思います。
よくできた映画でしたよ!

僕のネタバレを含む感想は広告を挟んで書いていきます。
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衝撃は切ない涙に変わる?

この映画。一言でいえば童貞を拗らせた老人が結婚詐欺にあったの巻って話です。
僕は最初のうちは直に女性を愛するという事が怖くてできなかった老人と外へ出る事が怖くてできない若い女性が鑑定の依頼を通して心を通わせる。そして(予告編であったように)女性は失踪し、何があったのか?みたいな話なのかと思っておりました。

で、実際観ていくと怪しい怪しい。顔のない依頼人は中盤では顔を出しますので実際のところは主人公であるオールドマンとクレアが心を通わせる感じで、最後はオールドマンに起きた事件で外に出る事を頑なに拒んでいたクレアがオールドマンを助けるために外に出てハッピーエンド!かと思わせて・・・って話が出木すぎ。って観ていて思ったので結末は案の定でした・・・

結構えぐい終わりだなぁと思います。ハッピーエンドの目線で観る事もできるのですけれど、ちょっとそれを連想するにはもうちょっと演出が必要だったのではないかと。
全然切なくねぇよ。と思いました。予告詐欺だな。まぁちょっと違った意味で切ない気持ちにはなるので詐欺ではないかと思いますが(後述します)

黒幕はビリーでしょ?


主人公のオールドマンも童貞だったとはいえ、清廉潔白な老人というわけではなく相棒のビリーに自分が鑑定してコレクションしたい作品をオークションで競り落としビリーに報酬を与える事で欲しいものを手に入れてきました。
物語の途中でも本物を贋作と偽って出品し、タイミングの誤りでビリーが競り落とせなかった時にも「あれは本物だったのに!」となじります。
そんなわけでしてオールドマンには表に出せない高価な資産が沢山ある事を知っているのはビリーだけなのです。

その資産である絵画をごっそりクレアをはじめオールドマンの周りの人間全員で騙して盗み去るという。

ビリー自身はもともと画家だったようですが才能はなかったようです。
ビリーがオールドマン最後のオークションの後に「俺の絵を贈るよ」といい、実際にクレアが持っていた母の肖像画はビリーが書いたものだったわけですが、真相を知る前のオールドマン自身がクレアに対して「何の価値もない絵だよ」と鑑定しています。ですので才能はなかったのでしょうね。

ビリーだけがオールドマンの秘密のコレクションの存在を知っていた。というのともう一つの狙いとしてオークションで競り落としているのはビリーである以上、お金の出所はオールドマンだったとしても絵画の所有権はビリーにあるのだと思います。
ビリーからオールドマンに正式に所有権が渡るとあれだけのコレクションを実は鑑定人が所有していたとなると問題になるでしょうから。
つまり所有権はビリーにあるのでオールドマンのコレクションをビリーが盗んでも正当な所有者の手元に戻っただけですのでオールドマンは警察には行けないのですよね。もちろんビリーが絵画を手放すとして換金する事も何も違法ではなくオールドマンは何もできないのです。

ただ一つビリーにとってはオールドマンのコレクションルームに行くための方法がなかった。だからこそクレアを雇い、ロバートを使い巧妙にオールドマンを騙したのだと。

劇中では最終的な黒幕がビリーなのか、ロバートなのかは明言されていないのですが上記の理由で僕はビリーがまさしくこの資産を奪い取るという絵を描いたのだと思います。

結末の解釈

この物語がハッピーエンドかバッドエンドかと聞かれれば僕はバッドの方だと思っています。
ただここについては解釈が別れるように作られているかなと思います。
初見でバットと判断していますけれど、複数みたら考えは変わるかもしれません。

何故ならば絵画を全て持ち去られたオールドマンがその後にとった行動と現状があやふやなように撮られているからです。簡単に言えば、

全てを失う→オールドマンがチェコでクレアを探す(ラストシーン)→結局現れず精神崩壊で病院

というケース(僕は今のところこちらをとっています)と、

全てを失う→精神崩壊で病院→病院で手紙を受け取る→復活したオールドマンがチェコでクレアを探す

というケースも考えられるからです。

ラストシーンはチェコのバーでクレアを待つオールドマンで終わるわけですけれど、合間合間で挟まれる病院でのシーンがあるせいで、それが回想なのかどうかがわからなくなっています。

僕は回想で終わったと思っています。

でもクレアが来るかもししれないエンドも考えられるのです。

ハッピーエンドの可能性


劇中でしきりにオールドマンとロバートがした会話で「愛も贋作ができるのか?」というのがありました。それについてはYESであり、実際にクレアのオールドマンへの愛は贋作だったという事を表しているのですけれど、もう1つオールドマンが語った真理がありまして、それは、
贋作の中にも真実がある。って話でした。

要は優れた贋作師も必ず自分の証明をその作品の中にわずかながら入れてしまうのだと。

これが示唆しているのは贋作の愛であったクレアの中にも真実は隠されている。って事なのだと思います。

そして、その真実の証がクレアが途中で語ったチェコのプラハで愛する人が自分を置いていった。その時から外にでられない。自分の中にある素晴らしい思い出は「ナイト&バー」というお店なのだと。
ラストのオールドマンはその言葉を信じて、実際にチェコにあった「ナイト&バー」というお店でクレアを待つわけですね。


劇中。クレアはもう1つ何気ないところで大事な事を言っていて、はじめてクレアの秘密の部屋にオールドマンが案内された時にクレアにかかってきた電話(相手はビリーと思われる)でクレアは「ほぼ完了したけれど、ラストをハッピーエンドに書き換えるつもり」と言っています。

これを好意的に解釈すれば、オールドマンを信じ込ませ資産を奪うための段取りはほぼ完了したけれど、当初の予定であったラストについては変更する。と言っているように思います。

そのラストこそ、資産は奪われますがクレアを手に入れる事ができるというラストの可能性なのかと。

ロバートもオールドマンに「今クレアとオートマータどちらが欲しいんだ?」みたいなことを言っていましたしね。

こう書いているとラストについてはハッピーになる可能性も結構あるんじゃないかと思ってきました。

でも、まぁ今のところあれは、それにすがったオールドマンがその真実さえなかった事に絶望して病院にいったのだろうという感じです。

病院(施設?)とチェコにいくオールドマンについては時系列をあえて分らなくしているから、バットエンドにもできるし、上に書いたような理由からハッピーとまでは言えなくても希望がある終わり方だったという事もできる。と観客に結末をゆだねているように思います。

それとも複数みるとこの時系列が整理されるのかしら?

仮にハッピーならもうちょっと何かヒントが欲しいところでした。

オールドマンがもうちょっと若ければ・・・

僕はバットエンド説を唱えている訳ですが、この映画オールドマンがもうちょっと若ければバットエンドでも再び立ち上がる事ができる!っていう映画になったと思うのですよ。
ずっと童貞で生身の女性が怖いから絵画の女性をコレクションしていた変態じーちゃんなわけですけれど、クレアとの出会いでオールドマン自身が変わっていき、最終的には絵画ではなく生身の女性を愛する事ができるようになったわけですから。セックスの快楽も覚えたし。

でもねぇ。やり直すにはオールドマンは歳をとり過ぎているのです。クレアが高い授業料だったとしても若ければ別の女性とやりなおしたりすることができると思うのですが、すべてを失い足腰も経たなくなり座ったきりの老人となってしまったオールドマンは知らなくていい果実を食べてしまったようなものだと思いました。

だからエグイなぁと。ここまできたら知らなくていい事だってあったはずなのに、人生の最後の段階になって知ってしまった。でもそれを取り戻すことはもうできない。
キツイなぁと思いました。

クレアについて

僕が書いているクレアは劇中でオールドマンを騙す若い女性の事で、本当のクレアはあのパブにいた数字をすべて記憶している不思議な女性なのですよね。
いろいろハッピーエンドの要素を考えましたけれど、最終的にバットに考えたのは数字がとてつもなく残酷にすべてを表したからだと思いました。
数字は嘘をつけないのです。だから外に出られないといった偽クレアが数百回外にでた事を本当にクレアは記憶しているし、そこに嘘はないのだと。

オールドマンが暴漢に襲われた時に本物のクレアもどこかに電話したみたいだったけけれど、あれはなんだったのだろう?あそこは見落としたのかわかりませんでした。

結論

ラストの解釈が僕はバットなのでモヤモヤが残りましたが、映画としてはしっかりと楽しめるものだったと思います。

『鑑定士と顔のない依頼人』★★★

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ゴッホは欺く 下巻 (新潮文庫)

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名画巡るミステリー。こちらはゴッホの争奪戦です。
頭脳と頭脳のぶつかり合い、ノンストップで話が進むサイコーに面白い作品。
最後の最後まで目が離せない展開は必読です。

以上長くなりましたが。

それでは、また。