介護喜劇映画です。
認知症の母親とハゲちゃびんの息子を主人公にユーモラスな長崎での日常が描かれます。
一見認知症をネタにしているだけの物語に見える人もいるんじゃないかと穿ったりする人もいるかもしれませんが、根底にあるのは限りない家族愛なので安心して観られます。
幅広い年齢層の人が観れる映画だと思いますが、やはり感情移入しやすいのは30代以降の人ではないかと。
このくらいの年齢になると親が老いるという事が現実の問題として見えてくる時期なんじゃないでしょうか?
あくまで喜劇ですので、現実に親の認知症に向き合っている方なんかには向いていないかもしれません。映画を観た後にNHKスペシャルで『老人漂流社会』という番組が放送されていて見ましたが高齢者の認知症がいかに危うく過酷な話なのかが痛々しい程伝わってきました。それに比べると『ペコロスの母に会いに行く』は喜劇と銘打っているだけあり、痛々しさというのはあまりありません。
だからこそ気楽に観ることができる映画だと思いますし、親が認知症になったらと考えるきっかけをくれる映画とも言えるのではないかと思いました。
繰り返しますが家族愛を中心とした人を慈しむ事をテーマにしていると思いますので、鑑賞後は心がほっこりする映画です。
まだ公開して2週間くらいですので劇場で観ることをお勧めします!
予告を挟んで感想をつらつら書きます。
音楽が心の支えというのがベタだけれど良かった。
親の認知症と介護。仕事はその影響もあったりしてうまくいかない。
でもペコロス岡野にはギターと歌がある。劇中で竹中直人を案内する「おいのオアシス」では様々な現実に向き合いながら日々を生きる人たちがいて、ペコロスはそこでギターを奏で歌を歌う。
ベタな事なのかもしれないけれど、母親の認知症からも、仕事からも解放され自分自身の心の拠り所として音楽があるというのはよかったなぁと思います。
これまたベタだけど竹中直人が良かった。
ホームで出会った同じく認知症の母を持つ竹中直人。とてもベタな役どころなのですが、カツラである事を隠しながら皆と接する姿が滑稽で僕は好きでした。
人に歴史あり。
回想で描かれる母の過去。そして神経症で酒乱だった父との思い出。
母にとって酒乱だった父との思い出は辛いものだったのだろう。
でも父は父なりに家族を大事に思っていて、ゆういちの心にはそれが残っている。
竹中直人と飲みながらどちらもろくな父親ではなかったと言いつつ「でも、大好きでした」とくったくなく笑うのはなんだかよかった。
そんな父と連れ添いながらゆういちを育てた母。
母の思い出はいいものばかりではないのだろうけれど、被爆した友人からの最後の手紙やその手紙を読むことで生きる決心をする姿など認知症を患った母がどんな歴史を歩んできたかも描かれる。
その思い出の中で生きている人がいるからこそラストシーンに繋がるのだ。
どんな人にも歴史はある。それは自分自身にも言えることなのだ。
最後に
とっちらかった感想ですが『ペコロスの母に会いに行く』は重くなるテーマである老いや介護・痴呆といったものを誰もが訪れる可能性のあるものとして捉えつつ、絶望する必要はないんじゃないか?と訴えてくる。
現実は過酷だろう。けれども誰もがいつか老いというものに直面する時に、きっとそれでも親の面倒をみたり助け合ったりするというのはそこに至るまでの絆の積み重ねなのだなぁと思った。
そんなに難しく考えず、まずは観てほしい1作だと思いました。
『ペコロスの母に会いに行く』★★★★