心のパンツは脱げるのか?

30代のおにー・・・おっさんが心のパンツを脱いで話しかけるよ。

2012年1番面白かった『ハイスコアガール』

僕の中学生時代は頭は丸刈りで年がら年中、緑のジャージを着て自転車で町を移動していた。
自転車に乗るのもヘルメットが必要で、顎紐をつけるのが絶対条件だった。
ゲームセンターは禁止。
見つかれば容赦なく先生からビンタを食らう。

そんな中学生時代だったけれど、ゲームセンターには
「スト?」があった。

先生に見つからないように、今では考えられないような小さなジャスコのゲームコーナーの片隅だったり、
ホームセンターのゲームコーナーで先生が来ないのを確かめながら、
僕や友達は「スト?」に夢中だった。

押切蓮介が2012年に満を持して世に送り出した『ハイスコアガール』は、1977年生まれの僕をあの頃のゲームセンターに
連れ戻しながら、とてつもないラブストーリーを見せてくれる。

もともと雑誌『コンテニュー』で連載されていた『ピコピコ少年』が好きだった。
これはまさに子供時代をゲーセンを中心としたゲームで過ごした物語であり、主人公のカンちゃんはゲームセンターにまつわる
友情であったり、悲哀であったりをいきいきと描かれていた。

ピコピコ少年

ピコピコ少年

そんな『ピコピコ少年』の連載が終了し、ほとんどセルフリメイクかと思った『ハイスコアガール』が始まった。
実際は『ピコピコ少年』の世界観をベースにした、とてつもない恋愛物語だ。

ハイスコアガール
勉強はもちろん、運動も、およそ学校生活において何も発揮できる能力がなく、ただ純粋にゲームをすることで自分を確立している
小学生、矢口ハルオ
いつものゲーセンで『スト?』の対戦をしようとしたところ、ザンギエフで28連勝をしている少女に出会う。
同じクラスの大野晶。容姿端麗、学業優秀、家は金持ち。でも何故かゲーセンでとてつもない腕前を発揮している。

学校に居場所のないハルオにとって、大野の存在はゲーセンという自分の聖域を犯す存在でしかなく、
そんな大野に反感を覚えつつも、圧倒的なゲームの腕前に敬意を表したりもする。

なぜかゲーセンで一緒になるハルオと大野。この二人と、当時本当に稼働していた様々なゲームのプレイが絶妙に物語を作ってゆく。

小学生時代を描いた1巻では、まだハルオと大野の中には核とした恋愛感情というのはないのだと思う。
何か気になる。何か好き。言葉で明確にすることのできないぼんやりとした、でも恋愛だよな。っていうこそばゆい感情が描かれている。

大野は作中一言もしゃべらない。ひたすら無言でゲームのハイスコアをたたき出す。
口はきかないけれどハルオと表情と身振り手振りで意思を通じていくのがとても可愛い。

1話、1話とゲームを通じてハルオと大野がちょっとずつ、触れ合ってゆくのがとてもいい。こそばゆい。
ハルオはゲームの事しか頭になくて、でも自分の好きなゲームの世界を大野という同志に語らずにはいられない。
大野は日々のお嬢様としての生活から唯一自由になれる場所でハルオに出会い、ハルオを通じて新しいゲームの世界にふれあってゆく。

こんなのリアルにあるわけねぇよと自分の子供時代を思いつつ、ハルオと大野が気になってたまらない。

そして1巻のクライマックスである別離。大野は海外に旅立つ。そこでハルオがとった行動は・・・

・・・と恰好つけて書いてみましたが、この漫画。本気でお勧めです。
90年代アーケードラブコメディー!って嘘ですから。

全然コメディーじゃないですよ。

ものすごい純粋な恋愛ものとして読めるかと思います。

スト?のあるゲーセンでほんのひと時でも子供時代を送った事がある人なら、どストライクです。

あの時、「昇竜拳が出せない」「ザンギのスクリューパイルドライバー偶然できた!」という会話をしていた友達がもしも美女であったなら、
きっとこんな素敵な恋愛があったのかもなぁって思わせてくれるのです。

続く2巻ではハルオが中学生になり、大野がいないハルオの生活が描かれます。
そして、新しいヒロインである日高小春の登場。

勉強しかやることがなく、遊び方をしらない小春から、ハルオは自由気ままな男に見えるのです。
偶然自宅にゲーム筐体を置くことになったため、ハルオと接する機会が多くなる小春。

恋っていつも女の子からはじめちゃいますよね。

2巻は本当にしみじみとそう思えます。
小春は大野と違い、ゲームを見てくれる女の子。
何だかわからないけれど、ハルオが好きならそれを後ろで見ているよって存在。

ハルオと小春がゲームの話をするたびに読者である僕たちは大野の存在を思い出しつつ、小春のほのかな恋心を思うと切なくなります。
ハルオはいつか大野がいつか帰ってくると思い、その時にはゲームで戦うべく腕を磨いている。

ハイスコアガール』は1巻だけでもかなり完成された漫画だと思いましたが、ヒロインの大野が不在となる時に、小春というもうひとりにヒロインを出すことで、
かなり切なくなっていきます。目が離せない。


そして2巻ラストで大野の帰還。なぜかハルオとゲームをさける大野。その理由は?
が描かれるのがつい先日発売された3巻です。ここで中学生編はクライマックスを迎えます。

3巻は発売されたばかりですし、是非ともご自身でご確認いただきたい!

ハルオと大野。ハルオと小春。ハルオと大野。ハルオ。

2012年もたくさんの漫画を読みましたし、年に1度しかでない『リアル』をはじめ、たくさんの面白い漫画が出ました。
ただ、あえて2012年から発売開始された漫画(単行本)として、一番ベストな漫画は何か?といえば、

間違いなく、
ハイスコアガールです。

つい最近も2012年の漫画大賞みたいなのでリストアップされていましたし、多くの人に読んでもらいたい作品です。
1990年代に学生だった人。必読書ですよ。

是非とも!おすすめです。

それでは、また。